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研究特集
「東葉高速鉄道の高運賃問題」

1.東葉高速鉄道の概要


 東葉高速鉄道は、千葉県船橋市の西船橋駅から八千代市の東葉勝田台駅間約16.2kmを結ぶ路線である。ほぼすべての列車が西船橋から東京メトロ東西線と相互直通運転しており、一部は東西線経由で中野駅よりJR中央緩行線の三鷹駅まで直通する。


2.東葉高速鉄道の車両


 東葉高速鉄道の2000系と東京メトロの05系、07系、15000系を使用している。


3.運賃が高額な理由


 西船橋から東葉勝田台までの運賃は630円で、1kmあたりに換算すると近隣の路線の2倍以上とかなり高額になっている。その理由は3つある。
 1つ目の理由は、計画時点での混乱があったことである。当初、この路線は都営新宿線の延伸路線として計画されたが、千葉ニュータウンが計画されたたため、都営新宿線の延長路線は千葉ニュータウンに向かう計画に変更され、この計画はなくなった。次に1968年、営団東西線の延伸として西船橋から東武野田線方面、四年後には終点を勝田台として建設すると決められた。しかしこの計画は凍結してしまった。理由は運輸省の反対である。京成電鉄が、オイルショックの影響による不動産投資・地域開発分野で大幅な損失を計上したことや、新東京国際空港(現・成田国際空港)の開港の遅れにより業績を悪化させたことを考慮して、当時の運輸省が一時的に計画を凍結した。また、営団地下鉄が「東京のテリトリーから大きく外れる」として申請を取り下げた。結局その後の1984年、東葉高速線は第三セクター方式で建設することに決まった。
 2つ目の理由は、建設の際に用地買収が難航したことである。土地を買い取るための機関、千葉県の収用委員会が機能していなかった。当時、成田空港建設に反対した住民が暴徒化し千葉県の収用委員会の会長を襲撃し、後任の委員が全員辞退し誰も選任されなかったため、千葉県収用委員会は事務局のみとなり、中核派の目論見通り収用委員会は事実上の機能停止という前代未聞の事態に陥った。このため、東葉高速線の用地買収のみならず、千葉県のインフラ整備に多大な影響をもたらした。
 3つ目の理由は、莫大な建設費がかかったことである。バブル期の土地高騰や手抜き工事によるトンネル崩落事故が重なり、3000億円の借金を抱えて開業した。東葉高速鉄道が借金を返済しきるのは2061年の予定になっている。


4.運賃の値下げに向けて


 このような中、2017年に当選した八千代市長が東葉高速線の値下げに取り掛かると発表した。市長の値下げのための策の内容は、東葉高速鉄道と東京メトロの経営を統合し、東京メトロ東西線の2つある車両基地の機能を東葉高速線の緑が丘車両基地に移転させ、残った東京メトロ東西線の車両基地を売却して東葉高速線の負債を圧縮するというものである。
 では、これは本当に可能なのか。まず1つ目の疑問点は経営統合は可能なのかということだ。これは、現時点では不可能である。東京メトロは現在、半官半民の企業で経営統合は不可能だ。東京メトロが株式上場して完全な民間企業になれば可能となる。 ちなみに株式上場の見込みは都営地下鉄との一元化問題が壁となっているが、東京メトロは早期の株式公開を宣言している。
 2つ目の疑問点は、車両基地の移転は可能なのかということだ。これは可能である。グラフから分かるように東葉高速線の車両基地の面積は東京メトロの2つの基地の合計面積に匹敵するほどである。
 3つ目の疑問点は、東西線の車両基地を売却するとどのくらい圧縮できるのかということだ。これについては、負債のうちの30パーセントが圧縮できる。


 東京メトロと東葉高速鉄道の経営統合をすると、東京メトロにも継続した需要が見込まれる。また、東葉高速線は、飯山満〜東海神間に新駅を建設することがほぼ決定しており、新駅予定地の周りでは区画整理が進行している。また、八千代緑が丘駅北側でもはぐみの杜という大規模マンションや戸建て住宅が建設されている。このようなことから、経営統合は将来的にはあり得るだろう。そのためには東葉高速鉄道が沿線住民の理解を得て、地道に借金を返すこと、八千代市のみならず船橋市や千葉県と連携して国への働きかけを強めることが重要である。

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