市川学園鉄道研究部

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研究特集
「四季島と夜行列車のこれから」

はじめに


 皆さんは夜行列車に乗ったことがあるだろうか。新幹線や高速道路が発達した昨今では乗ったことがないという方も多いかもしれない。近年夜行列車は減少し、存続の危機に瀕している。そんな夜行列車を未来に残していくにはどのような具体策が考えられるのか研究してみた。


1.夜行列車の定義


 夜行列車とは「日をまたいで運行される列車」のことである。わかりやすく言うと出発地を夕方または夜に出発し、目的地には翌日の早朝〜昼に到着する列車のことだ。


2.色々な夜行列車


 これから紹介する4列車にはそれぞれ夜行列車としての特徴がある。まず「北斗星」は客車で運行されるのに対し、「サンライズエクスプレス」は電車で運行される。また「ムーンライト信州」はほかの3列車と違って寝台がなく座席のみである。そして最後は後ほど紹介する、クルーズトレイン「トランスイート四季島」だ。


3.夜行列車の歴史


 日本では明治22年に初めて夜行列車が運行を始めた。運行区間は新橋〜神戸間で所要時間は20時間強だった。当時はまだ鉄道技術が発達していなかったため、長距離列車を運行しようとすすると日にちをまたいで運行せざるを得なかった。
 そして夜行列車の本数が多くなってくると乗り心地の向上のため寝台車が導入され、昭和4年には東京〜下関間で優等列車も走り出した。
 このグレードアップの波に拍車をかけたのが20系客車の登場だ。20系客車は寝台特急「あさかぜ」に初めて投入され、その設備の豪華さから「走るホテル」などと呼ばれていた。また車体が青かったことから、これ以降優等寝台列車は「ブルートレイン」と言われるようになった。この20系客車登場以降、夜行列車のグレードアップが加速していった。
 設備が向上したことで人気に火が付き、夜行列車が増発されていった。全盛期の1964年には東京駅発の夜行列車は28本にも上った。そして東京駅だけではなく全国の主要な駅からたくさんの夜行列車が運行されていた。


4.夜行列車の衰退


 しかし、現在では夜行列車は東京駅発の「サンライズ瀬戸・出雲」2本のみとなっている。なぜここまで夜行列車は衰退したのか、原因は二つあると考える。
 まず一つ目は、長距離輸送の速達化である。これまで長距離輸送の主役だった夜行列車が新幹線の開業によってお役御免となってしまった。
 次に二つ目は、夜行バスの登場である。高速道路の整備により安くて便利な夜行バスが登場したことにより夜行列車は価格面でも不利になってしまった。
 これら二つの理由により利用者が減少し夜行列車の廃止が相次ぎ、夜行列車は衰退していった。


5.クルーズトレインの登場


 廃止が相次いだ夜行列車だが、JRも対策を打たなかったわけではない。「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」に代表されるようなこれまでの夜行列車の印象を変えるような列車の運行を開始し巻き返しを図ったが、客車は新造されたものではなかったため老朽化が激しく、運行継続が厳しくなったとして廃止されてしまった。
 しかしこの2列車が何も残さず廃止されたわけではない。同じようなコンセプトで設備を豪華にして登場したのが「クルーズトレイン」である。
 クルーズトレインとは周遊型豪華寝台列車のことで、日本では三列車が運行されている。それぞれの名称は「ななつ星in九州」、「トワイライトエクスプレス瑞風」、そして「TRAIN SUITE四季島」だ。それぞれ九州地方、西日本地方、北日本・北海道地方を中心に運行されている。


6.TRAIN SUITE四季島


 この中で主に北日本・北海道地方で運行されている「TRAIN SUITE四季島」について紹介する。四季島は2017年5月1日に運行を開始し、現在は毎週2コースのペースで運行されている。車両は新造されたE001系で10両編成である。E001系は電車と気動車の機能を併せ持ったシステム、「EDC方式」を動力方式としている。チケットの平均倍率は6.6倍程度となっている。なお運行初日の倍率は76倍にもなったそうだ。
 四季島にはいくつか特徴がある。
 まず一つ目は“どこでも走れる”ことだ。先ほども紹介した電車と気動車、両方の機能を持つシステム「EDC方式」を搭載しているので、電化・非電化問わず走行することができる。また、交直流3電源の他に新幹線用25000V/50Hzにも対応していて、さらに保安装置も新幹線用のものを含む4種類を搭載しているので、青函トンネル及び北海道内の走行も可能となっている。
 二つ目は“多彩なコース”があることだ。四季島には3つのコースがあり、現在はそれぞれ、東北本線を北上し、道南エリアを周遊した後、羽越本線経由で上野に戻ってくる「三泊四日コース」と、東北本線を往復しながら弘前・鳴子温泉などを回る「二泊三日コース」、姨捨駅や会津若松などを回る「一泊二日コース」が企画されている。
 三つ目は“専用ラウンジが設置されている”ことだ。上野駅13番線に四季島に乗車する人しか入ることのできない専用ラウンジを設置し、出発までの時間を過ごす、クルーやスタッフとの語らいの場として、また、帰着後「この旅がまだ続く旅」であることを実感してもらうためのフェアウェルパーティーの場所として活用されている。


7.夜行列車のこれから


 これから先、夜行列車を存続させていくには夜行列車衰退の原因となった、「長距離輸送の速達化」と「価格競争」の二つの問題を解決することが重要だろう。そのためには二つのパラダイムシフトを起こすことが必要である。一つは利用スタイルのパラダイムシフト、もう一つは客層のパラダイムシフトだ。パラダイムシフトとはそれまでの認識が劇的に変化するという意味である。
 まず利用スタイルのパラダイムシフトについて説明する。利用スタイルのパラダイムシフトとは一言でいうと速達化への対応のことだ。どういうことかというと、これまでは夜行列車に乗るのはあくまで目的地に行くための手段にすぎなかった。しかし速達化が進んだ近年手段としての役割はほぼないに等しい。そこで鉄道遺産を活用したり、バス等を使ったツアー型にして運行することにより夜行列車に乗ること自体が目的となるような列車を増やすことで夜行列車生き残りの道は開けるのではないだろうか。
 次に客層のパラダイムシフトについて説明する。客層のパラダイムシフトとは価格競争への対応のことだ。これまで夜行列車のメインの客層は出張に行くサラリーマンや旅行・帰省などで使う家族連れだった。しかしこの客層では運賃の高さなどが原因で夜行バス等に利用者をとられてしまった。そのため、これから狙っていくべき客層は富裕層やシニア世代だろう。なぜなら、これらの層には金銭的に余裕があるため多少運賃が高額になっても利用が見込めるからだ。
 以上2つのパラダイムシフトを叶えているのが先ほど紹介したクルーズトレインである。クルーズトレインはバスなどを使った周遊型列車でありなおかつ、客層は富裕層を踏まえている。そのため、まさに夜行列車存続には欠かせない存在と言えるだろう。

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